Sustainability Control Towerの始め方


はじめに

今、世界で注目されるサステナビリティ。環境、社会、経済の3つの側面で持続可能な状態をつくるために地球規模で関心が高まっています。企業の長期目標に取入れたサステナビリティ経営やESG、SDGsなど、多様な考え方が身近になってきています。こうした考え方に基づき、SAPもサステナビリティに関連した製品/ソリューション開発に力をいれています。本ブログでは、その中の一つSustainability Control Tower(SCT)をピックアップしながら、サステナビリティの考え方とSAPテクノロジーがどう結びついているのかを見ていきたいと思います。

*この記事は chillSAP 夏の自由研究2022 の記事として執筆しています。

SAPのサステナビリティ(3つのゼロ)

自身もサステナビリティに対する正しい知識や理解が未熟のため、Youtubeで一般公開されているこちらのSAP Community Callの力も借りて綴っていきます。下図はその中からの抜粋です。

画面の中段にある3つのゼロをSAPが推進していることは広く知られています。この3つはそれぞれ環境・経済・社会というサステナビリティの考え方に合致しています。そして見えないものは測れないということで、見せる部分(Holistic Steering & Reporting)にも力を入れています。

計画段階のものも含まれますが、公開されているSAPのサステナビリティ製品/ソリューションは下図の通り多岐に渡ります(2021年時点)。

どこから手を付ければいいのか迷ってしまいますが、現在主力となっている製品/ソリューションは、こちらのサステナビリティ製品ページに目を通すことで把握ができますので、ある程度絞れそうです。中には、AribaやConcurといった既存の別ソリューションも目に入ってきます。これは、原材料調達や出張/移動などの過程で発生するCO2やGHG排出量も計測要素にいれているためです。

今回は、サステナビリティに関する情報を統合的に見せる部分に着目し、「Sustainability Control Tower(SCT)」を実機でセットアップして触れてみます。

Sustainability Control Tower(SCT)

2022年8月時点では、SCTは一つの製品として提供されているわけではありません。システム基盤の実態はSAP Analytics Cloud(SAC)とSAP Data Warehouse Cloud(DWC)の組合せで構成されており、それらをそれぞれ個別に準備する必要があります。大まかなシステム構成は下図のとおりとなっています。

始め方

まずはSCTセットアップのために用意されたSAPノートを確認し、添付されているPDF(Installation Instructions)をダウンロードします。

ノート番号:3128618 – Installation instructions for SAP Sustainability Control Tower (2022.01)

あとは記載のとおり進めていくだけですが、文章のみで説明されているため少しイメージが沸きにくく、実施していることを要約すると下記の5ステップになります。

# 作内ステップ 作業内容
1 パッケージの入手

・PDFに記載のSCT Provisioningチーム宛てにメールし、SCTコンテンツパッケージを送付してもらう。

*中身はSACとDWC向けの事前定義ファイル群。(テーブル定義、Data Flow、CSVファイル(サンプルデータ)等)

2 DWC側の設定

・事前準備(スペース作成、タイムディメンション設定)

・SACとの接続設定

3 SAC側の設定 ・DWCとの接続設定
4 DWCへのパッケージImport

・SCTコンテンツパッケージのImport

・CSVのImport

・Data Flowの実行

・Initial data loadの実行

5 SACへのパッケージImport ・SCTコンテンツパッケージのImport

これで基本的なセットアップは完了です。

余談になりますが、SACもDWCもFree Trialが提供されていますので、それらの環境でもパッケージの送付やセットアップが可能か確認してみました。残念ながら、前提としてフルアクセスライセンスの購入が必須ということで、手軽に個人で環境をつくるということは難しそうです。

初期状態のままですが実際にアクセスしたTop画面が下図です。

SCTは4つのPillar(柱)でカテゴライズされており、ヘッダーに小さく表示されているGovernance・Planet・People・Prosperityがそれにあたります。

この画面は4つのPillarの一つ、Planetに関する情報です。Planetの中でもいくつか指標が分かれており、上図は土地利用と生態系の状態を視覚的に表しています。例えば、左側のグラフは環境保護区やその隣接した土地の広さ(ヘクタール)を示しており、地上の生態系が保たれているかを判断する一つの情報として使われます。

4つのPillarの出どころは、WEF(世界経済フォーラム)が定めているサステナビリティの指標です。世の中にはサステナビリティを測る多くの指標が存在していますが、徐々にこのWEFの指標に集約されてきているそうです。SAPは当初からこの指標を支持しているため、SCTの見せるカットもそれに準拠しています。下図は4つのPillarの概要とそれぞれに結付くSDGsです。

Planetの中にある別の指標に、GHG排出量を表すグラフがあります。今回取り込んだデータでは該当するサンプルデータがなく、初期状態では下図のようにデータ無しの状態で表示されています。

このようにSCTはあくまで情報を見せる機能であるため、見せるためのデータが必要です。このデータは利用する私達で収集・取込みする必要があり、どこからどのように収集するかも私達に委ねられています。物理的なデータストアはDWCになるため、多様なデータソースをサポートしています。ExcelやCSVでのファイル取込みや、SAP製品や外部システムのデータソースと直接接続して取得することも可能ですし、今後開発が進む3つのゼロを成す他のサステナビリティ製品群とも直接連携できるようになっていくはずです。

データをどこからどのように収集するのか。レポートを誰にどう見せていくのか。レポーティング機能開発の際に直面する設計が、SCTでも必要になってきます。サステナビリティ経営や統合報告書のインプット情報にもなるため、導入企業ごとに検討されていくことになると思います。

今後の開発ロードマップ

SCTの今後の開発Road Mapを確認すると、主にESGパフォーマンス/スコアを意識した機能拡張になっています。現在は取込んだデータを表示できるところが主軸ですが、将来は計算したスコアリング情報も見れるようになっていくようです。今後に期待が懸かります。

おわりに

SCTを一つの例に取り、サステナビリティがSAPテクノロジーとしてどう実現されているかに触れてみました。始めてみたいけど始め方が分からない方の一助になれば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。