EDUCAÇÃO E TECNOLOGIA

SAP Analytics Cloudを活用した離職リスク予測と人員計画

近年、従業員ひとりひとりの価値観が変わり多様なキャリアの形を求めるなかで、転職や社内の異動が増えてきていると思います。

そうした状況下で、経営者や事部の中には以下のような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

「従業員の離職が予測できず、離職後の後継者準備や人員体制が間に合わない。」
「頻繁に離職や採用があるなかで、人員計画を手作業で行うため、手間や時間がかかってしまう。」

もし、従業員の離職が事前にある程度予測でき、それに基づく人員計画がスムーズに行えれば、人事部の業務はどのように変わるでしょうか。

本ブログでは、離職リスク予測から人員計画まで、SAPソリューションの活用によって、どのように実現できるかをご紹介します。

総務省統計局のデータによると、2019年の転職者数は351万人と過去最多を記録しています。このように転職者数は増加し、社内の人材は流動的になってきています。そうしたなかで、以下のような課題が考えられます。

【課題】

  1. 離職の原因が分からず、組織の改善に役立てられない。
  2. 予期せぬ従業員の離職により、後継者準備や人員体制の再構築に時間がかかる。
  3. 人員計画をエクセルや紙ベースで行うため、集約・計算するのに手間や時間がかかり、経営戦略に資する計画分析が行えていない。

それぞれの課題に対して考えられる解決のアプローチはこちらです。

【解決策】

  1. 過去の離職のデータから、離職の因子を分析する。
  2. 従業員の離職可能性を予測し、後継者の準備状況や組織人員構成をシミュレーションする。
  3. 各部門からの人員需要情報を集約し、経営情報と合わせて多角的な計画案を作成し、各種人事施策に反映する。

今回はSAP Analytics CloudのPredictive、BI、Planningの3つの機能を活用して、人事部の取るべき一連のプロセスをお見せします。こちらのプロセスで使用するSAP Analytics Cloudはノーコードで予測や可視化、計画を行うことができるため、人事部や経営者自身が実際に全てのプロセスを実行できます。

まず、予測モデルに学習させる過去のデータの準備と、予測モデルを作成する際の設定を行います。

今回は、学習させるデータに入社歴や評価、異動など30近くの項目を持つ従業員データを、予測したい項目に離職リスクを、因子に含めない項目に従業員IDを設定しました。ここで、従業員データはSAP SuccessFactorsなどの人事システムから取得することを想定しています。それでは実際に、予測モデルを作成します。

*架空のデータを使用しております。

SAP Analytics CloudのSmart Predict (Predictive)機能を用いることで、人事部の方でもグラフィカルな操作で簡単に予測モデルを作成することが可能です。Smart Predictで作成されるモデルには分類、回帰、時系列予測の3種類があります。今回は過去の離職した社員の情報から、離職可能性の有無を分類するモデルを作ります。Smart Predictの詳しい使い方についてはこちらをご覧ください

こちらのページでは、作成したモデルの予測精度や因子の分析が行えます。

精度に関する指標をみると、モデルの説明力を表す予測力と、モデルの予測の正確性を表す予測信頼度があります。今回は、予測力が86.09%、予測信頼度が92.86%と有効性の高いモデルを作成することができました。

続いて、因子の影響度について見てみます。過去の社内異動に関する因子が21.48%とトップで、年齢、3か月以内の昇進、前ポジションの期間と続いています。大きく影響を与えている因子について、より詳細に見ていきましょう。

まずは、社内異動に関する因子について見てみます。

データを見てみると、社内異動をしたことのない社員や部門を超えて異動をした社員よりも、部門内で異動を試みた社員の方が、離職する可能性が高いです。これは、自分の仕事に不満を持ち改善を期待して異動したものの、それが改善されず離職してしまっていることが読み取れます。

続いて、昇進に関する因子について見ていきましょう。

こちらのデータからは、過去3年間に昇進しなかった社員は、昇進した社員よりも離職する可能性が高いと分かります。このことから、昇進制度や評価体制への不満から離職にいたっているケースが多いことが考えられ、改善が必要であるかもしれません。

最後は、入社歴に関する因子です。

こちらを見てみると、入社して2ヶ月しか経っていない従業員、入社して36ヶ月から60ヶ月の従業員の離職リスクが高いです。一方で、最初の2ヶ月が過ぎると、36ヶ月までは離職リスクが低くなります。もしかすると、新入社員の研修制度が不十分であったり、人気のない部署に配属されてしまったことによるものかもしれません。3年目から5年目の従業員の離職リスクが高いのは、会社の人材育成に不満があったり、新しいチャレンジを求める人が多いからかもしれません。

このように、予測モデルは離職リスクが予測できるだけでなく、どの因子が離職リスクに大きく影響を与えているかも分かり、人事制度や組織の改善に活かすことが可能となっています。続いて、実際に学習させたモデルで予測を行っていきましょう。

早速、予測させたいデータを選んで、ステップ②で作成した学習モデルをもとに予測させてみましょう。

こちらが結果のデータです。「proba_rr_Flight_Risk」が各従業員の離職の確率について、「decision_rr_Flight_Risk」は「proba_rr_Flight_Risk」をもとに離職するかどうかを判断しています。

このように、Smart Predictを使用することで、従来では予測することが困難であった従業員の離職リスクを予測し、後継者の準備・人員体制づくりへ移ることが可能となっております。次は予測した結果を可視化していきましょう。

それでは、先ほど作成した予測モデルを組み込んだ異動・離職に関するダッシュボードを見ていきましょう。

離職率の予想や過去の離職状況について、一目で見ることが可能となっております。

このように人的資本に関する情報をダッシュボード上で可視化することで、経営会議で数字をもとに人事施策について話し合うことができ、早期の人員計画へとつなげることが可能です。

続いて、人員計画をおこないます。ここでは、従業員の離職可能性や退職、人材戦略と照らし合わせて人員計画を立てています。

下の図が、退職率と自主離職率が初期設定のままのときの必要なヘッドカウントの数を表しています。

ここで、ステップ③で予測した自主離職率10.55%を入力して、再計算を行います。SAP Analytics CloudのPlanning機能を使うことで、自動計算が行われ、ヘッドカウント数が更新されます。

続いて、求めたヘッドカウントと現在の従業員数のギャップを求めます。各職種の必要ポジション数と現従業員数のギャップが「Gap Delta」の項目に表示されます。

今回は、このギャップを採用と社内異動によって埋めるため、ギャップの人数に合うように新規採用数と社内異動数を入力します。

このように離職率や人材戦略をもとに人員計画を行い、新たに採用すべき人数が分かりました。

エクセルや紙ベースで人員計画を行った場合、離職率や必要なポジション数が変わるごとにデータを収集したり、計算しなおす必要があります。一方で、SAP Analytics CloudのPlanning機能を使うことで、自動で計算を行うことが可能です。このように常に現在の状況をもとに人員体制を計画し、実行することができます。

ここで作成した人員計画をもとに実際に⑥人事施策(採用・異動など)をおこないます。

本ブログでは、SAP Analytics Cloudの3つの機能(Predictive/BI/Planning)を使って、離職リスクの予測から人員計画までを行う手法をご紹介しました。

このように、テクノロジーを活用して、先々の人員計画を立てることで、流動性が高まる労働市場のなかでも、経営戦略に合わせた組織体制・人員配置を行うことが可能になっています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

秋山 直登

Simon Maxime